ベトナムのEVメーカーであるVinFastが国内製造部門を売却するというニュースを目にしました。
私は以前ベトナムを旅行した際、街中でVinFastの車を数多く見かけました。タクシーにも採用されており、「ベトナムではかなり成功している企業なのだろう」という印象を持っていました。
しかし今回の記事を読むと、表面上の印象と企業の実態は必ずしも一致しないことが分かります。
街中にあふれるVinFast
VinFastはベトナム最大級の財閥であるビングループが育成してきたEVメーカーです。
2025年のベトナム国内販売台数は約17万5千台、シェアは約30%とされています。
実際にベトナムを訪れると、VinFastの車を見ない日はないほどです。
日本人の感覚で言えば、街中を走るトヨタやホンダのような存在感があります。
そのため、「これだけ売れているなら儲かっているのだろう」と考えてしまいます。
しかし現実はそう単純ではありません。
売れているのに巨額赤字
VinFastは2025年に約100兆ドン、日本円にして約6,000億円もの赤字を計上しています。
なぜこれほど売れているのに赤字なのでしょうか。
理由の一つは、市場シェアの獲得を最優先してきたことです。
価格競争力を高めるために利益を犠牲にし、さらにタクシー事業への大量供給や充電インフラ整備など、多額の先行投資を続けてきました。
また、新興EVメーカー特有の課題として、保証修理費や品質改善コストも大きく膨らんでいます。
売上は伸びても、それ以上にコストが増えている状況です。
EVビジネスは工場が重い
EVメーカーは工場建設に莫大な資金を必要とします。
VinFastはベトナム国内に大型工場やバッテリー工場を保有するだけでなく、インドやインドネシアへの進出、さらにはアメリカ工場の建設計画まで進めています。
製造業は設備投資額が大きいため、工場を建てれば建てるほど減価償却費や借入金負担が増えていきます。
成長のために投資した結果、その重みが経営を圧迫しているのです。
今回の再編の本質
今回のニュースで興味深いのは、VinFastが製造部門を切り離した点です。
工場やバッテリー事業とともに、巨額の借入金や負債も新会社へ移管されます。
その結果、VinFast本体の負債は大幅に減少する見込みです。
企業再編としては珍しい話ではありませんが、今回のケースでは買い手側が創業者と非常に近い関係者で構成されている点が特徴的です。
外部への完全売却というよりは、グループ内で負担を移し替えたような印象も受けます。
本当に黒字化できるのか
VinFastは今後、販売や研究開発、ブランド管理に集中するとしています。
一方で、製造を担う新会社は巨額の負債と過剰な生産能力を抱えています。
さらに海外市場で数百万台規模の販売拡大を前提とした計画も示されています。
しかし、自動車産業は極めて競争が激しい世界です。
中国メーカー、テスラ、既存自動車メーカーとの競争の中で、その計画通りに進む保証はありません。
売れていることと儲かっていることは違う
今回のニュースを見て改めて感じたのは、
「売れている会社」と「儲かっている会社」は別物だということです。
街中に車があふれていても、企業としては大赤字かもしれません。
逆に、あまり目立たない企業でも高収益を上げていることがあります。
これは自動車業界だけでなく、私たちの身近なビジネスにも当てはまります。
店舗数が多い、利用者が多い、知名度が高い。
それだけでは事業の成功を判断できません。
最終的に重要なのは、きちんと利益を生み出せているかどうかです。
ベトナムを代表するEVメーカーであるVinFastが今後黒字化できるのか。
そしてベトナム発のグローバル自動車メーカーとして成長できるのか。
今後も注目していきたいと思います。

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